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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
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第二部 離婚に付随する問題     03−3589−4905

第3章 慰謝料

1 離婚慰謝料の意義

離婚慰謝料は,離婚に伴う精神的苦痛を償うために支払われる損害賠償であり,判例上は,「離婚の場合における慰謝料請求権は,相手方の有責不法な行為によって離婚するの止むなきに至ったことにつき,相手方に対して損害賠償を請求することを目的とするもの」であるとされ,財産分与請求とは別途に離婚慰謝料の請求をすることが認められています(最判昭和31年2月21日民集10−2−124)。

もっとも,財産分与の場面において,相手方の有責性など慰謝料的要素が考慮されることもあり,財産分与と慰謝料との関係は理論上必ずしも明確ではありませんが,既に財産分与が行われた場合であっても,その金額等に照らし慰謝料的要素が考慮されていないと考えられる場合には,後で別途慰謝料請求をすることは妨げられないと解されています。

2 慰謝料の金額の相場

慰謝料についても,掲示板で「いくらもらえますか」というようなご質問をうけることがよくありますが,(離婚の場合に限らず)一般に慰謝料は,損害額を客観的に算定することが困難な精神的苦痛といった損害について,金額を算定できないという理由で損害賠償を一切認めないのも妥当ではないので,仕方なく裁判所が諸事情に照らし適当な金額を認定して賠償を命じるという性質のものであり,もともとはっきりした算定基準はありません。

ただ,離婚に伴い慰謝料請求が行われた過去の裁判例を見る限り,認容される可能性がある慰謝料の金額は高くても500〜600万円程度,というのが相場のようです。

時々,テレビなどで報道される有名人の離婚事件では,数千万円ないし1億円以上の慰謝料が支払われるケースもあるようですが,これらは協議離婚のケースであり,裁判手続で慰謝料を請求した場合にこれほど高額の慰謝料請求が認められた事案は,少なくともわが国の裁判例にはないと思われます。

なお,慰謝料の金額の算定にあたっては,婚姻が破綻に至った経緯,有責の程度といった事情のほか,婚姻期間や双方の経済的事情,子供の有無やその人数,予想される離婚後の状況など一切の事情が総合的に考慮され,一般に婚姻期間が長いほど慰謝料の金額も高くなると言われています。

ただ,婚姻期間が短い場合であっても,婚姻当初から配偶者と正常な性関係を持てないようなケースでは,比較的高額の慰謝料請求が認められているようです(夫の陰茎勃起不全による性交不能のため離婚に至った事件について100万円,妻の性交渉拒否により離婚に至った事件について150万円,夫がポルノ雑誌にばかり興味を示し夫婦生活に応じなかった事件について500万円の慰謝料請求が認められた裁判例があります)。

3 第三者に対する慰謝料請求

婚姻関係の破綻の原因が夫婦以外の第三者にある場合,例えば姑が嫁をいびり続けた挙げ句に追い出したのが離婚の原因になったような場合には,その姑(第三者)に対する慰謝料請求が認められることもあります。もっとも,例えば姑の嫁いびりに夫も荷担していたような場合には,夫にも有責性が認められますから,姑と夫の共同不法行為と認定される(この場合,請求認容額の範囲内で姑と夫のどちらからお金を取ることもできるが,夫から満額慰謝料を取れた場合には,さらに姑から慰謝料を取ることはできない)こともあります。

こうした事案で最も多いのは,おそらく配偶者が不貞行為を働いた場合に,不貞行為の相手方(いわゆる愛人)に対し慰謝料請求をする事案かと思われます。

不貞行為の相手方に対する慰謝料請求は,その相手方に故意または過失があれば判例上も一般的に認められていますが,愛人が不倫となることを知らずに配偶者と関係を持った場合であって,不倫となることを知らなかったことにつき過失も認められない場合(例えば,夫が「妻とは既に離婚している」と偽って愛人と関係を持ち,愛人も騙されていたような場合)や,別居して婚姻関係が実質的に破綻した後にはじめて愛人と関係を持ったような場合には,慰謝料請求が認められないこともあります。

愛人の存在を知ってから裁判上の慰謝料請求をするまでに3年以上時間が空いていると,(その間愛人関係が継続していても)時効により慰謝料請求が棄却されることがあるほか,離婚により元夫から既に相当額の慰謝料を受け取っている事案では,不貞行為は元夫との共同不法行為であるから,元夫から慰謝料を受け取ったことにより精神的損害は填補されているとして,愛人に対する慰謝料請求を認めなかった裁判例もあります。

また,最近では愛人に対する慰謝料請求を認めること自体に様々な批判があることを反映して,認容される慰謝料の金額は概ね低額に抑えられる傾向にあり,過去の裁判例を見る限り,配偶者が離婚後に愛人と再婚する予定であるなど婚姻関係を完全に破綻させた事例でも最高300万円程度,最終的に離婚に至っていないケースでは最高数十万円程度といったところが大体の相場のようです。

ちなみに,子供が愛人に対し慰謝料請求をしたケースも過去にありましたが,判例上そのような慰謝料請求は認められないものとされています。

4 慰謝料に関する注意点

・離婚慰謝料は,離婚の原因を作り出した配偶者(有責配偶者)がその相手方に対し支払うものであり,財産分与とは根本的に考え方が異なります。例えば,専業主婦である妻が他の男性と不倫してそれが離婚の原因になった場合,離婚に伴う財産分与は夫から妻に支払われる可能性がありますが,離婚慰謝料は逆に妻から夫に支払うことになります。

・離婚原因が性格不一致などはっきりした非行でない場合には,慰謝料請求は仮に認められても金額はかなり低くなる傾向にあります。

・慰謝料は,当事者同士の話し合いで金額を決定することもでき,慰謝料請求をしないという合意も法的には有効ですので,一旦慰謝料請求をしないという合意をした場合には,後でそれを翻して慰謝料請求をすることは基本的に認められません。

・慰謝料請求権は,損害及び加害者を知ってから3年間で時効により消滅しますので,離婚後3年以上経過した後元配偶者に対してする慰謝料請求,愛人の存在を知ってから3年以上経過した後その愛人に対してする慰謝料請求などは,時効を理由に請求が棄却される可能性があります。

5 慰謝料請求の手続

慰謝料請求は,一般的な民事上の権利に基づく請求ですので,地方裁判所や簡易裁判所の民事訴訟手続で請求することになります。ただし,離婚に伴う慰謝料請求等については,家庭裁判所の調停を利用したり,離婚訴訟における附帯請求として離婚と一緒に請求したりすることもできますし,家庭裁判所で離婚訴訟が継続しているときに別途地方裁判所で当該離婚を原因とする慰謝料請求の訴えを提起したような場合には,裁判所の職権で当該慰謝料請求事件が家庭裁判所に移送され,離婚事件と併合審理されることもあります。

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