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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
共著
個人再生徹底活用
マニュアル
(2005年法改正に
完全対応)

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第二部 離婚に付随する問題     03−3589−4905

第5章 離婚で損をしないために

離婚自体は,当事者間の協議がまとまれば簡単にすることが出来ますが,離婚の際の取り決めについてはしっかり考えておかないと,後で不測の損害を被ることになります。
以下,離婚の際の取り決めを考えるにあたって,注意すべき事項をいくつか挙げておきます。

(1)相手方から財産分与等を受け取るときには,なるべく即時払いで!

離婚の際,相手方から財産分与や慰謝料を受け取ることがありますが,このとき相手方に十分な資力がないからといって,財産分与や慰謝料を長期の分割払いにするのは危険です。

離婚した相手方と家庭裁判所で養育費についての取り決めをしても,約定どおり支払ってもらえたのは全体の7割程度に過ぎないという統計資料があり,これが財産分与や慰謝料,しかも当事者間で念書などを交わしただけとなると,履行率はさらに低くなると思われます。

相手方が財産分与や慰謝料の支払いを履行しない場合には,民事訴訟で履行を請求することもできますが,民事訴訟には手間も費用もかかり,さらに相手方が失業等で全く無収入になってしまった場合,自己破産した場合などには,全く回収が不可能になってしまうこともあります。

また,最近は財産分与として住宅ローンの残った住宅を妻に分与し,夫が住宅ローンの支払いを続けるといった取り決めをするケースもあるようですが,これは特に危険です。

この場合,夫が住宅ローンの支払いを怠れば住宅は競売にかけられてしまい,妻には自分で住宅ローンを支払う以外住宅の競売を免れる方法がなくなってしまいます。いわば,自分が住宅に住み続けられるかどうかは,全て元夫の経済力とまじめさにかかっているというような事態になってしまうのです。

したがって,相手方から財産分与や慰謝料を受け取るときには,長期の分割払いや住宅ローンの肩代わりといった方法は避け,できるだけ現金即時払いで受け取るようにした方がよいと思われます。特に相手方が信用できない人物の場合,「10年先の100万円」より「今日の10万円」を選んだ方が堅実であるとすら言えます。

(2)やむを得ず分割払いで受け取るときは,なるべく養育費優先で!

もっとも,事情により財産分与や慰謝料のほか,子供の養育費などを分割払いとせざるを得ないことはあると思われます。

その場合,財産分与や養育費の債権に比べると,子供の養育費債権は自己破産しても免責にならない,給料の差し押さえも支給額の2分の1まで可能(通常の債権は4分の1まで)とされているなど,通常の債権より法律上強力に保護されていますので,一括で受け取るものは財産分与ないし慰謝料名義,分割払いとするのは子供の養育費名義とするのがベターです。

ただし,養育費は事情の変更があった場合,家庭裁判所の審判による増減額請求の対象になりますので,財産分与や慰謝料分も加味して養育費の金額をあまり高額に設定してしまうと,後で審判により養育費の金額が減額されてしまうおそれがあります。この点は注意が必要です。

なお,養育費名義とするか否かにかかわらず,支払いの約束を公正証書にしておけば,万一支払いがなかったときに訴訟手続きを経ることなく直ちに強制執行(給料差し押さえなど)をすることができますので,安定した収入のある相手には効果的です。

(3)「子供の養育費はいらない」発言は信じるな!

時々,子供の養育費は請求しないという約束で離婚をする夫婦がいますが,世の中にこれほど信用できない言葉は滅多にありません。

実際,離婚するときは子供の養育費は要らないという条件で別れたけれど,実際暮らしてみると養育費がないと生活していけないので,やはり養育費を請求したいと言ってくる人は少なくありませんし,本来養育費は子の親に対する請求権であるため,実際にも養育費に関する両親間の取り決めは法的拘束力がなく,このようなケースでも子供を養育している側の親が家庭裁判所で養育費の支払請求をすれば大抵認められてしまいます。

離婚の際,財産分与や慰謝料を請求しないという合意は法的にも有効ですが,子供の養育費を請求しないという合意は法的拘束力がなく,後で反故にされてしまう可能性がありますので,離婚の際の取り決めはそのことを十分頭に置いて考えるべきでしょう。

(4)子供の監護や面接交渉の問題で曖昧な合意は禁物!

離婚する際に別れる子供との面接交渉については,離婚の際に特に対立がないと,「面接交渉については後日改めて協議する」などという曖昧な合意となることがありますが,面接交渉について具体的な取り決めがないと,相手方から面接交渉を拒否されたときに有効な対処が出来ず,夫婦間の紛争が再燃するおそれがあります。

法的に一番確実なのは,面接交渉の日時,場所及び方法についてできるだけ明確に離婚協議書や調停条項に記載し,相手方が履行しなかった場合の損害賠償額も定めておくことですが,本気で面接交渉をしたいのであれば,少なくとも面接の日時くらいは予め決めておいた方がよいと思われます。

また,子供の養育について親権者と監護権者を分けるような解決をする場合には,親権者と監護権者の役割分担について法律では決まりが特にありませんので,具体的な役割と権限の分担について予め取り決めておくことも必要になります。

(5)税金問題も考慮せよ!

離婚に際して受け取る財産分与や慰謝料については,基本的に非課税です(ただし,財産分与として過当に高額な場合や,明らかに租税回避目的と認められる場合には贈与税が課税される可能性もあります)。

一方,自宅などの不動産を財産分与として渡す場合には,税法上はその不動産を売却した上でその代金を分与するのと同じだという考え方が採られますので,その不動産を売却したときと同様,譲渡所得が生じたものとされ(不動産を受け取った側ではなく渡した側に)所得税が課税されます。これを回避するには,贈与税の配偶者控除を活用して婚姻中に贈与するなどの方策を採る必要が生じる場合もあります。

その他,婚姻中に所得税の配偶者控除・配偶者特別控除を受けていた場合,離婚するとその後は控除を受けられなくなりますが,配偶者がいるかどうかの判定時期はその年の12月31日です(年末調整の申告をした時期ではありません)ので,配偶者控除などを問題にするのであれば,離婚は年明けになってから行う必要があります。

このように,離婚の際には税金の問題が生じることもあるので,十分な検討が必要になります。
なお,離婚と年金の問題については,第4部を読んでください。

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