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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
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千川健一の本
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 1 債務の返済に困ったときの債務整理手続

「債務整理手続」とは,自力で借金その他の債務を返済することが不可能または困難になった人が,弁護士または裁判所の力を借りて,債務の減免や返済期限の延長などをしてもらって,生活の再建を図る法的手続の総称です。

債務整理手続には,一般によく知られている「自己破産」のほか,「個人再生」「任意整理」といった方法があり,依頼者の具体的状況に応じて使い分けることになります。

以下のいずれかに該当する人は,弁護士への借金相談や債務整理手続の活用を考えられたほうがよいでしょう。

(1)複数の消費者金融,商工ローン,信販会社等から多額のお金を借りてしまい,現状では返済が不可能または困難である人

(2)住宅ローンの負担が重く,他の金融機関等からの借り入れを含めると返済が困難である人

(3)借金の返済自体はできているものの,金利負担が重いために,借金がなかなか減らない人

(4)親戚や知人等の債務の保証人になってしまい,自力ではとても支払えないような金額の支払いを請求されている人

(5)事業をされている人で,買掛債務のほか,金融機関等からの借り入れもあり,資金繰りに行き詰ってしまった人,または今後の収益などを考えると返済が困難な人

(6)悪質な貸金業者や闇金融等からお金を借りてしまい,執拗な取立て行為に悩まされている人

(7)その他,債務の返済について深刻に困っている人

 債務整理をしようかどうか迷っているときは?

最近,掲示板で「債務整理をしようかどうか迷っている」といった借金相談を受けることがよくありますが,判断に迷われている場合には以下のように考えるとよいでしょう。

 本来,自分で借りたお金は自分でしっかり返済するのが社会のルールであり,単に払うのが嫌だなどという理由で安易に自己破産などをするのは,確かに許されるべきことではありません。

しかし,自力での返済が困難または不可能となるほど多額の借金を抱えてしまった場合,無理に借金問題を自力で解決しようとすると,あなた自身が長期間にわたって苛酷な生活を強いられるだけでなく,業者からの取立や金銭トラブル等によってあなたの家族や友人にも重大な迷惑をかけることがあり,中には借金苦のあまり夜逃げや自殺をする人,窃盗,強盗や横領などの犯罪行為に走り社会全体に迷惑を掛けてしまう人もいます。

国は,借金苦に陥った人がそのような事態に陥ることを防ぐために,自己破産や個人再生などといった救済手続きを設けていますし,弁護士もこれらの手続きの代理や借金相談業務のほか,古くから任意整理による救済を行っています。

借金問題を自力で解決できる見込みが立たないときは,無理せず早めに弁護士に借金相談するべきでしょう。

 サラ金などの金融業者は,その多くが利息制限法という法律に違反する高額の利息を取っており,長年にわたりサラ金などを利用している人は,法律上本来支払う必要のない高額の利息を支払い続けていることになります。そして,高額の利息を支払い続けていることにより,いくら返済を続けても借金の額が一向に減らない状態になっている場合には,自力でいくら頑張っても,借金問題を自力で解決できる可能性はほとんどありません。

今後の返済が完全に行き詰まっていなくても,このような場合には早めに弁護士に借金相談すべきでしょう。

 借金問題は,いわば病気と同じです。早いうちに弁護士に借金相談しておけば,債務整理も業者との間の任意整理をするだけで済むことが多いですが,問題が深刻になるまで放置しておくと,借金問題の解決やその後の生活再建はどんどん困難になっていきます。

借金問題の実情は人によってそれぞれですが,典型的なパターンを挙げると以下のような感じになります。

(1) 初期状態

消費者金融業者,信販会社などから合計100〜300万円程度の借金があり,返済は続けているがなかなか借金が減らない。

多くの場合任意整理によって解決可能で,早く解決すれば財産や社会的信用もそれほど失わずに済む。

(2)  中期状態

消費者金融,信販会社等に対する債務額が400〜700万円程度に達し,もはや自分の収入から返済原資を捻出することができず,返済のための新たな借入を繰り返している状態。
多くの場合,業者だけでなく親戚や友人などからも借入をするようになり,万一の場合に備えた預貯金や保険なども取り崩してしまう。

多くの場合,もはや任意整理では解決不可能であり,個人再生または自己破産を選択することになる。お金を借りている親族や友人,勤務先等も基本的に債権者として取り扱わざるを得ず,人間関係の維持に悩むことになる。

高額な財産を残すことは難しくなるが,住宅ローンで購入した自宅がある場合,住宅ローン条項付き個人再生の利用が可能な場合が多い。

(3) 後期状態

債務額は概ね1000万円前後かそれ以上に達し,親族,友人や勤務先等からの借入はもちろん,闇金融などに手を出していることもある。消費者金融等に対する返済は,延滞すると督促が厳しいので何とか支払い続けていることが多いが,住宅ローンや銀行等への返済については,既に延滞していることが多い。

借金の返済や督促への対応などにより,本人や家族は精神的に追い詰められ,家庭崩壊やそれに近い状態になっていることが多い。

住宅ローン条項付き個人再生は,もはや履行可能かどうかぎりぎりの線に達していることが多く,多くは自己破産を選択せざるを得ない結果となり,自宅は競売にかけられることになる。

仕事や収入を維持できていればその後の生活再建は何とか可能であるが,家も財産も無くし,多くは配偶者とも離婚して,ほとんどゼロからの再出発となる。当分は親族からの援助に頼らざるを得ないことも多い。

(4) 末期状態

高額の債務を抱えているだけでなく,借金問題のため既に仕事や家庭も失い,自力では生活の目途も立たない状態。借金の取り立てを逃れるため親族や友人の家などを転々としたり,ホームレスになったりするケースも多く,生活苦のため犯罪に走るケースもある。

ここまで来ると,もはや失うものは何もないので,債務整理の方針は基本的に自己破産のみである(ただし,長期間逃げ回っていた場合には消滅時効の援用で解決することもある)。ただ,生活の基盤が既に失われているので,借金問題よりむしろ今後の生活再建が大きな問題となる。

中には,自力での生活再建ができず,自己破産後に闇金融に手を出して取立に苦しんだ挙げ句に自殺したり,犯罪行為に走ったりして,まともな生活に戻れないまま生涯を終えるケースも少なくない。

 自己破産することを心情的に嫌がる人は多いですが,自己破産をする場合のデメリットは一般に想像されているほど多くありません。

大正時代に(旧)破産法が制定されたころの破産手続きは,破産者に対する懲罰的な制度であったため,その頃のイメージが今日まで引きずられているようなのですが,戦後の破産法改正における免責制度の新設,そして平成17年の破産法全面改正を経て,破産手続きは多重債務者を救済しその経済生活の再生の機会を確保するための制度として完全に生まれ変わっており,自己破産のデメリットは必要最小限のものにとどめられています。

自己破産をした場合,概ね時価20万円以上の高額な資産を持っているとそれが債権者への配当に充てられることになりますが,日常の家財道具や生活上不可欠な財産まで持って行かれるわけではありません。現在住んでいる借家も,家賃を滞納しない限りそのまま住み続けることができますし,自己破産したというだけで会社を解雇されることはありません(もし解雇された場合は不当解雇であり,裁判で解雇の無効を主張できます)。

自己破産すると,弁護士や税理士,保険外交員などの公的資格(基本的には,他人の財産を扱う公的資格)は一時的に失われ,また会社その他の法人の役員,警備員などの業務に就くことはできなくなりますが,それら以外の職業に就くことにつき制限はありません(なお,会社の役員については,新会社法が施行により資格制限の対象から外される予定になっています)。破産手続中も選挙権,被選挙権などが制限されることはありません。

また,上記の資格制限は免責決定の確定により解除されますので,実際に資格制限が行われる期間は破産手続中の数ヶ月程度に過ぎません。

自己破産した場合,破産手続開始の決定と免責許可の決定が官報により公告されますが,実際に官報で破産者の氏名等をチェックする人は,金融機関の関係者などを除いてはほとんどいませんので,自己破産した事実が一般的に広く知れ渡るわけではありません。自己破産した事実が戸籍に掲載されることもありません(なお,破産すると本籍地の「破産者名簿」に登録され,身分証明書には破産者である旨の記載がなされますが,免責決定が確定するとその記載も無くなるようです)。

なお,最近闇金融等の業者が,自己破産した人を官報でチェックし,ダイレクトメール等を送り付けて融資の勧誘をしてくることがよくあり,これらに手を出してしまうと大変なことになりますが,無視していれば特に問題は生じません。

自己破産をすると,信用情報機関に事故情報として登録されるため,概ねその後5〜7年くらいはクレジットカード等の利用ができなくなると言われていますが,その後は収入等の信用状態に問題がなければ再び利用できるようになる可能性もあります(ただし,一度免責許可の決定が確定すると,その後7年間は原則として再度の免責を受けることができませんので,二度と多重債務状態に陥ることのないよう注意が必要です)。

自己破産に伴うデメリットは,概ね以上で説明した程度のことであり,ここに書かれていないことはほとんどがデマです。自己破産は,深刻な多重債務状態から経済的再建を図るためには非常に有用な手続きであり,自己破産が必要な事態に陥ってしまったときは,必要以上に脅えて利用をためらうべきではありません。

 弁護士に債務整理手続を依頼すると,一般的には数十万円程度の費用がかかりますが(任意整理の場合はもう少し安いこともあります),当事務所をはじめ,大都市圏で債務整理事件を手掛けている事務所の多くは,依頼者の収入に照らし無理のない範囲で,弁護士費用の分割払いを認めており,依頼時にまとまった金額を用意できなくても債務整理事件を受任してもらえます。

ただし,債務整理事件をあまり取り扱っていない弁護士や地方の弁護士に相談すると,弁護士費用の一括払いを要求されることもあるので,依頼の際には弁護士選びが重要な作業になります。



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