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6 他人に知られずに債務整理をすることは可能か?

この問題については,依頼者や掲示板からもよくご質問があるのですが,結論から言いますと,誰にも知られないで債務整理手続をすることができる場合もありますが、結果的に知られてしまうことも少なくないということになります。

ただし,債務整理手続の種類等によっては,親族,知人や勤務先等に知られないで済む可能性が高い場合と,そうでない場合があるますので,ここで詳しく検討してみたいと思います。

(1) 他人に知られにくい手続と知られやすい手続

債務整理手続のうち,通常弁護士には依頼しない特定調停を除く3種類の債務整理手続については,一般に任意整理手続が最も他人に知られにくい一方,自己破産や個人再生の手続はそれらに比べますと他人に知られる可能性は高くなります。

なぜかといいますと,任意整理は裁判所を通さずに,うまく行けば債権者との話し合いだけで事件が解決してしまいますので,他人に知られる機会が少ないのに対し,自己破産や個人再生の手続では,官報に自分の氏名が掲載されてしまうこと(ただし、ほとんどの人はここまでチェックしていません),平日の昼間に裁判所に出頭し審尋を受ける必要があること,また裁判所から自分だけでなく同居の親族の収入等に関する資料の提出を求められることがあるため,同居の親族に対しては事情を説明せざるを得なくなることが挙げられます。

一般に,任意整理で済む依頼者は,多重債務といってもそれほど深刻な状況ではない人が多いのに対し,自己破産や個人再生手続を選択する人は,それだけ状況が深刻な場合が多いということもあり,そもそも家族に知られるかという問題以前に,家族でよく話し合い,お互いに助け合って適切な措置を講じなければ,そもそも債務整理手続による生活の再建は難しくなります。

自己破産や個人再生手続を選択する人は,同居の親族等には、債務整理の事実を正直に伝えて協力を得ることが望ましいと言えます。

(2) 借金や債務整理をしている事実が他人に知られてしまう場合

次に,借金をしていることや債務整理手続をしていることが,同居の親族以外の他人(別居中の両親,勤務先など)に知られてしまう典型的なケースについて紹介します。

1)  借金の取立

悪質な貸金業者等からお金を借り,その返済を延滞すると,債務者やその保証人のみならず,債務者の親族や勤務先にまで催促の電話をかけてくることがあり,このようなことがあれば借金をしていることは他人に知られてしまいます。

このような支払いの催促は,弁護士に債務整理事件を依頼すると通常は止まることは既に述べました(詳細は第1部の4を参照)。

2)  支払督促,訴訟

債権者が悪質な貸金業者等でなくても,債務の支払いを延滞すれば,債権者から内容証明郵便等で期限の利益喪失通知が送られてきたり,支払督促や訴えを提起され,裁判所から郵便で訴状等が送達されてくる場合があり,これを親族が見れば,借金があり延滞していることが知られてしまう可能性が大きいことになります。

なお,訴状が送られてきただけで同居の親族以外の他人に借金や債務整理等の事実が知られる可能性は低いと思いますが,訴訟や支払督促は,債権者が次に述べる「差押」をするために必要な債務名義(第6部の2参照)を獲得する手段ですので,油断はできません。

3)  給料債権等の差押 

債権者が判決などの債務名義(第6部の2参照)を獲得している場合,債務者の給料債権などを差し押さえてくる場合があります。給料債権の差押があった場合には,勤務先に差押命令書が送達されてしまい,勤務先に借金等の事実は知られてしまいます。

既に債務名義を取得している債権者がいる場合、訴訟提起が予測される債権者が含まれる場合には、給料差し押さえを防ぐために弁護士としても慎重な対応が必要とされます。

ただ,給料債権等の差押は,債務の支払い延滞から債務整理手続までの期間が長くなればなるほどその危険性が増すものであり,逆に言えば,既に債務を延滞している場合,または近い将来債務を延滞する可能性が高い場合には,早めに弁護士に事件を依頼して債務整理手続の手段を講じた方が,差押等を回避できる可能性は高まるといえます。

4)  仮差押

仮差押とは,訴訟で請求する債権の執行を確実に行えるようにするために,債務者の財産を仮に差し押さえてしまう手続のことであり,これは判決などの債務名義がなくても行うことができてしまいますので,非常に怖い手続です。

ただし,仮差押は差押に比べて申立手続が煩雑で,しかも債権者は保証金を積まなければなりませんので,債務額が100万円以下の債権者ではこうした手続はとらないことが多く,銀行等の金融機関も紳士的な対応を心がけているためか,実際に個人の融資先等に対し仮差押をしてきた例はほとんど聞きません。

実際に仮差押をしてくるのは,商工ローン等の業者が多く,こうした業者は債権回収に非常に熱心であることと,債務額も大きいため仮差押の労力,費用等をかけてもそれだけの実益があると考えているものと思われます。

給料債権の仮差押があれば,勤務先に仮差押命令が送達されてしまいますので,その段階で勤務先に知られてしまうことになりますが,相手が商工ローン等の業者である場合,おそらく仮差押以前に執拗な取立の催促が行われるでしょうから,借金や債務整理等の事実を秘密にしたい,ということで仮差押が問題になることはほとんどないと言ってよいでしょう。

5)  住宅の競売

住宅ローンを延滞している場合,住宅ローンの債権者が抵当権を実行して,住宅を競売にかけようとすることがあります。住宅が競売にかけられれば,住む家を奪われてしまいますので,親戚,知人や勤務先にも知られてしまう可能性が高いでしょう。

弁護士に,住宅ローン条項付きの個人再生事件を依頼し,弁護士から受任通知が行けば,仮に競売の申立をしても個人再生の手続内でこれを中止させることができますので,弁護士から住宅ローン債権者に対して住宅ローン特別条項付個人再生により債務整理をする予定がある旨を通知すれば通常は競売の申立を諦めます。

6)  保証人への請求

親族や知人,勤務先,仕事の得意先等が債務の保証人になっている場合,主債務者について債務整理手続をすると,保証人に対して請求が行ってしまいますので,保証人には債務整理の事実を確実に知られてしまいます。

これを防ぐには,保証人のついている債務を整理の対象から除外して返済を続行し,任意整理で他の債務を返済するしか方法はありません。親族や知人,勤務先や仕事の得意先等が債権者である場合も,基本的には同様です。

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