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インターネットを利用した架空請求・悪質請求について
3 『錯誤』による契約の無効
仮に,一応契約の申込みといえるような行為をしてしまった場合でも,ウェブサイト上の表示方法が分かりにくい,紛らわしいなどの原因で,料金の支払義務が生じるなど契約の具体的内容を事前に認識することが困難であった場合には,契約は『錯誤』により無効であると主張することが考えられます。
民法第95条本文では,「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」と規定されており,契約の申込みや承諾をした人が,契約の内容につき重大な誤解(錯誤)をしていた場合には,この規定に基づきその契約は無効となり,その契約に基づく登録料や料金などを支払う必要はありません。
ただし,ここでいう「誤解」は,もしそのような誤解をしていなければ,普通の人がそのような契約をすることはなかっただろうと認められるほどの重大な誤解でなければならず,またその誤解をするにあたり,誤解をした人に重大な過失がある場合には,錯誤による無効を主張することができないものとされています(同条但し書き)。
どのような場合に「重大な過失」が認められるかは,その誤解をした原因の他,その誤解をした人が一般消費者であるか事業者であるかなどの事情も考慮されるので一概にはいえませんが,一般のユーザーが契約の内容を容易に認識できないような状況で,誤って契約の申込みといえるような行為をしてしまった場合には,一般のユーザーに重大な過失が認められることはほとんどないと考えられます。ただ,具体的にどのような場合に「重大な過失」が認められるかについては,民法には詳細な規定が無く,最終的には裁判所の判断で決着をつけるしかないので,「自分には重大な過失が認められてしまうのではないか」と不安になってしまうケースが生じる可能性も否定できません。
4 電子消費者契約に関する特例
そこで,民法の規定におけるこのような問題点を解消するため,平成13年に『電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律』が制定され,同年12月25日から施行されました。この法律は名前が長いため,「電子消費者契約法」「電子消費者契約に関する民法特例法」などと呼ばれることもありますが,いずれも正式な略称ではないため,法務省などに問い合わせをする場合にはしっかり正式名称を言わないと,「そんな法律はありません」などと言われてしまうので注意して下さい。
この法律の第3条では,次のように規定されています。
(電子消費者契約に関する民法 の特例)
第三条 民法第九十五条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。
少々長くて読みづらい条文ですが,要するに一般の消費者が事業者に対し,パソコンのインターネットなどで情報の送信を行う方法により契約の申込みや承諾をした場合には,その事業者が消費者の意思を確認するのに十分な措置を取っていたか,または消費者の側がそのような措置は不要だという意思を表明していた場合を除き,消費者側に重大な過失があったかどうかを問わず,錯誤の主張が認められることになります(ただし,この場合にも錯誤の内容が重大なものであることが要求されることは変わりありません)。
具体的には,以下のような局面で効力を発揮する法律であると考えられています。
(1)ある画面を「無料」画面だと思って,これを見ようとしてボタンをクリックしたところ,実はその画面は有料画面で,後で代金を請求されてしまったという場合,そのボタンを押す前に有料だと分かるように事業者が明示していなければ,消費者に重大な過失があったかを問うことなく,その契約は無効であり,代金を支払う義務はありません。
(2)消費者がある商品を1つ注文したつもりが,操作ミスにより2つ注文したことになっていた場合,事業者である商店は,消費者が申込みボタンを押した後に,消費者が入力した申込内容をもう一度確認させる画面を用意するなどして,消費者の意思を確認する措置を取らなければならず,もしそのような措置を取っていなかった場合には,消費者に重大な過失があったかを問うことなく,2つ目の商品の売買契約は無効であり,消費者は2つ目の商品の代金を支払う必要はありません(ただし,2つ目の商品が送られてきた場合には,それを返品する必要があります)。
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