第六部 債務整理の関連知識   03−3589−4905
1 利息に法律上の制限はあるの? 〜利息制限法と「みなし弁済」〜
わが国の法律では,金銭の消費貸借契約(いわゆる貸金契約)における利息について3段階の規制が設けられています。多少複雑な説明になりますが,債務整理(特に任意整理)の効果を理解するためには,利息に関する法律知識は必要不可欠です。
(1) 第1段階・・・利息制限法
利息制限法1条1項では,金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は,その利息が以下の利率により計算した金額を超えるときは,その超過部分について無効とすると定められています(なお,遅延損害金については,同法4条1項により制限利息の1.46倍が上限とされています)。
| 元本の金額 |
利息 |
遅延損害金 |
| 10万円未満 |
年率20% |
年率29.2% |
| 10万円以上100万円未満 |
年率18% |
年率26.28% |
| 100万円以上 |
年率15% |
年率21.9% |
上記の利率を超える金額の利息や遅延損害金の定めは,その超過部分について無効となりますので,その超過部分の利息を法律上支払う義務はないほか,判例上債務者が超過利息分の金額を債権者に支払った場合には,その金額は残元金に充当され,その充当の結果残元金がゼロとなり過払い状態になった場合には,その過払金の返還を請求することもできると解されています(なお,利息制限法1条2項では,超過部分の利息を任意に支払った場合にはその返還を請求することができないと規定されていますが,この規定は上記判例により事実上無意味な規定となっています)。
しかし,利息制限法の制限利率を超える利息の定めをしても,次に述べる出資法の制限利率を超えるのでなければ刑事罰の対象にはなりませんので,貸金業者等の多くは,利息制限法の制限利率を超えるが,出資法違反にはならない範囲で営業を行っています。
そのため,債務整理をするときに,利息制限法及び上記判例の立場に基づき,債務者が法律上支払わなければならない金額を再計算(利息制限法に基づく引き直し計算)してみると,債務額が大幅に減額できる,といったことがあり得るわけです。
(2) 第2段階・・・出資法その1(年率29.2%)
『出資の受入,預り金及び金利等の取締りに関する法律』(出資法)5条2項は,業として金銭の貸付を行う者が年率29.2%(1日あたり0.08%)を超える割合による利息の契約をしたときは,5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し,またはこれを併科すると定めており,また当該超過利息を受領し,あるいはその支払いを要求した場合にも同様に処罰されます(5条3項)。
逆に言えば,利息制限法に違反する利息で金銭を貸し付けても,出資法違反にならなければ処罰されることはなく,借主が弁護士に相談し債務整理をしたりしなければ,利息制限法違反の利息を取っても事実上問題は起こらないため,利息制限法違反の高利率でお金を貸す業者が後を絶たないわけです。
(3) 第3段階・・・出資法その2(年率109.5%)
出資法5条1項では,金銭の貸付を行う者が(貸金業を営む者でなくても)年率109.5%(1日0.3%)を超える割合による利息の契約をしたときは,5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し,またはこれを併科すると定めており,また当該超過利息を受領し,あるいはその支払いを要求した場合にも同様に処罰されます(5条3項)。
この規定は,業者には関係ないため,実務上あまり重要ではなかったのですが,平成15年の『貸金業の規制等に関する法律』(貸金業法)改正により,貸金業を営む者が上記の利率を超える金額の利息で金銭の貸付に係る契約をしたときは,その契約自体を無効とするという規定(42条の2)が追加されました。
この規定は主に「トサン(10日で3割)」,「トゴ(10日で5割)」など法外な利率で金銭の貸付を行う違法業者(いわゆる「闇金融」)対策のために設けられたもので,年率109.5%を超えるような超高利でお金を貸した場合には,その貸金契約全体が無効となり,その契約に基づく利息は(利息制限法による制限の範囲内のものについても)一切支払う義務はなく,既に支払った利息は返還を請求できることになります。
(4) 貸金業法43条の「みなし弁済」
なお,利息制限法に違反する超過利息であっても,例外的に引き直し計算の対象とならないケースがあります。それが,貸金業法43条による「みなし弁済」の規定が適用される場合です。
貸金業法43条は,同法に基づく規制をすべて遵守している貸金業者への特典として,利息制限法違反の超過利息を債務者が利息として任意に支払っており,かつ,貸金業法により交付が義務づけられている契約書,領収証などの書類のすべてを交付している等の要件を満たす場合には,当該超過部分の支払も有効な利息の債務の弁済とみなす,と規定しています(ただし,出資法の規定に違反していない場合に限ります)。
この利息制限法と貸金業法43条の関係については様々な議論がありますが,現在の裁判例の大勢は利息制限法による債務者の保護を重視しており,貸金業法43条の適用要件については極めて厳格に解釈しているため,実際に貸金業法43条の「みなし弁済」が認められるケースは極めて稀です。
そのため,債務整理により弁護士などが貸金業者と交渉する場合には,貸金業者も利息制限法に基づく引き直し計算を素直に受け容れ,そもそも「みなし弁済」の主張自体してこないケースが大半です(もっとも,このような傾向は今後変わる可能性もあります)。
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