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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
共著
個人再生徹底活用
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(2005年法改正に
完全対応)

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千川健一の本
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3 年金も差押の対象になるの?

(1) 法律上の取り扱い

公的年金や,特別法の規定に基づく企業年金等については,年金を担保に供すること,及び差し押さえることが法律上原則として禁止されています。

1) 厚生年金保険法

(受給権の保護及び公課の禁止)

第41条 保険給付を受ける権利は,譲り渡し,担保に供し,又は差し押えることができない。ただし,年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は,この限りでない。
2 租税その他の公課は,保険給付として支給を受けた金銭を標準として,課することができない。ただし,老齢厚生年金については,この限りでない。

2) 国民年金法

(受給権の保護)

第24条 給付を受ける権利は,譲り渡し,担保に供し,又は差し押えることができない。ただし,年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は,この限りでない。

3) 国家公務員共済組合法

(給付を受ける権利の保護)

第49条 この法律に基づく給付を受ける権利は,譲り渡し,担保に供し,又は差し押さえることができない。ただし,年金である給付を受ける権利を国民生活金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫に担保に供する場合及び退職共済年金又は休業手当金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は,この限りでない。

4) 確定拠出年金法

(受給権の譲渡等の禁止等)

第32条 給付を受ける権利は,譲り渡し,担保に供し,又は差し押さえることができない。ただし,老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は,この限りでない。
2 租税その他の公課は,障害給付金として支給を受けた金銭を標準として,課することができない。

5) 確定給付企業年金法

(受給権の譲渡等の禁止等)

第34条 受給権は,譲り渡し,担保に供し,又は差し押さえることができない。ただし,老齢給付金,脱退一時金及び遺族給付金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は,この限りでない。
2 租税その他の公課は,障害給付金として支給を受けた金銭を標準として,課することができない。

(2) 国税滞納処分(またはその例)により差し押さえられる場合

国税などを滞納した場合には,年金も国税の滞納処分またはその例により差し押さえられてしまいますが,滞納者の最低限度の生活を保護する観点から,年金の差押については制限が設けられており,年金額のうち以下の?から?までに掲げる金額の合計額に達するまでの金額は,国税の滞納処分によっても差し押さえることができないものとされています(国税徴収法76条・77条,同施行令34条。なお,給与の差押についても同様)。

1)  その年金につき,所得税法の規定により徴収される所得税に相当する金額

2)  その年金につき,特別徴収の方法によって徴収される道府県民税及び市町村民税に相当する金額

3)  介護保険法その他の法令の規定により,その年金から控除される社会保険料に相当する金額

4)  年金の支給の基礎となった期間1ヶ月ごとに10万円

5)  滞納者と生計を一にする配偶者(内縁を含む)その他の親族があるときは,これらの者1人ごとに45,000円

6)  年金の金額から?〜?の金額の合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額(ただし,その金額が?+?の金額の2倍に相当する金額を超えるときは,当該金額)

(3) 法律上担保に供することが可能な場合

独立行政法人福祉医療機構法(平成14年12月13日法律第166号)第12条第1項第12号は,機構の業務の1つとして「厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号),船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)又は国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)に基づく年金たる給付の受給権者(第二十四条第一項において「厚生年金等受給権者」という。)に対し、その受給権を担保として小口の資金の貸付けを行うこと」を掲げており,この規定に基づき同機構が年金担保貸付事業を行う際には,国民年金(老齢福祉年金を除く。),厚生年金,または船員保険年金の受給権を担保に取ることができると解されています。

同機構に基づく年金担保貸付事業は,通称シルバーローンと呼ばれ,貸付額は全額担保融資(年金受給権の全額を担保に入れる場合)であれば年金額の1.5倍まで,半額担保融資(年金受給権の半額を担保に入れる場合)であれば年金額まで(ただし,いずれも250万円が上限)とされています。

年金担保貸付事業の詳細については,独立行政法人福祉医療機構のホームページhttp://www.wam.go.jp/wam/gyoumu/nenkin/index.html
をご覧下さい。

(4) 銀行に振り込まれた年金と差押

このように,年金の受給権に対する差押は法律上禁止されていますが,年金が銀行口座に振り込まれた後,その預金口座に対する差押がなされることはよくあります。

年金が一旦受給者の預金口座に振り込まれた場合は,その法的性質は年金受給者の銀行に対する預金債権となることから,例えその預金口座が専ら年金受給のための振込口座とされているときであっても,その全額を差し押さえることが可能であると解されています(東京高等裁判所平成4年2月5日決定判例タイムズ788−270)。

このような差押を受けた場合の対策としては,まず民事執行法第153条第1項の規定に基づき,差押命令の取り消しを請求することが考えられます。

すなわち,受給された年金の振込口座が差押を受けたことにより,年金受給者の生活に著しい支障が生じているような場合には,裁判所に差押命令の全部又は一部の取り消しを請求できることとされているので,この制度を利用するということです。

また,既に差し押さえられてしまった預金債権については仕方がないとしても,将来振り込まれる年金の差し押さえを防止したいという場合には,年金の振込口座を他の銀行等の口座に変更するという対策も考えられます。

(5) 悪徳金融業者による年金取り上げはなぜ起こるか?

なお,年金の受給権を担保に供することは法律上禁止されているにもかかわらず,一部の悪徳金融業者により,貸付金の担保として高齢者の年金が取り上げられているといった報道がなされることがよくあります。

これは,年金証書があれば年金を受給権者本人に代理して受け取ることは実務上可能であり,このような行為に対する罰則は特に定められていないことから,金融業者が高齢者に対する貸付の担保として年金証書を取り上げてしまえば,事実上年金が金融業者の担保に入れられてしまうということです。

一般に,このような金融業者の金利は適法な年金担保貸付事業の金利に比べ著しく高いことから,このような業者の被害に遭えば,年金生活者である高齢者は,その生活基盤を根こそぎ奪われることになってしまいます。

もっとも,刑事罰の適用がないといっても,金融業者が適法に年金の受給権を担保に取れるわけではありませんので,金融業者に年金証書を取り上げられてしまった場合は,訴訟や簡易裁判所の調停手続などを利用して,金融業者に対し年金証書の返還を請求することができます。

ただし,業者が抵抗してきた場合には相応の手間と費用がかかってしまうので,年金を担保にしようとする悪質な金融業者には関わり合いにならないことが一番大切です。

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