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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
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4 自動車と債務整理

債務整理事件の依頼者の中には,現に自動車を所有し,または使用しており,債務整理後も自動車を維持していたいという希望を述べられる方がよくおられます。そこで,ここでは自動車と債務整理についてまとめておきたいと思います。

(1) 自動車については,以下の3通りのケースを考えることができます。

Aケース: 自動車を所有しており,それに関連したローン債務はない場合
Bケース: 自動車を所有しており,その購入のための借入債務は残っているが,自動車に所有権留保などの担保は付されていない場合(銀行,農協等からの借入の場合に多い)
Cケース: 自動車を利用しているが,その車のローン債務があり,その債務を完済するまでその車の所有権が債権者等に留保されているケース(いわゆる「所有権留保」であり,信販,ディーラーのクレジット利用の場合に多い)

●A及びBのケース

(いずれも自動車が資産ということになります。Bのケースではローンはありますが,車の所有権はあくまでも債務者の側にあるのです)

1) 破産手続では,破産財団を構成するのが原則ですが,価値が低い場合には無視されます(20万円以下)。財団を構成する場合には,換価処分して配当にまわることになります(管財人報酬になることもあります。)。

2) これを防止するためには,第三者に買い取ってもらうしかありません。

その場合には,時価より低廉な額で売却してしまうと,偏頗行為として否認の対象となるので,相当な時価で売却することが大切で,さらにその売却資金を弁護士費用,生活にきちんと宛てたことを後に説明できるようにしておくことも大切です。

前述のように,デリケートな問題なので依頼する弁護士と相談すべきことになります。

3) 個人再生では,資産そのものを処分する必要はありません。

他に資産がある場合(保険の解約返戻金,退職金8分の1,現金,預金その他)と自動車の時価との合計額が最低弁済額の基準の一つとなります(清算価値保障の原則)。

●Cのケース

契約上ローン債務の延滞があれば,その債務の担保のために車の引き揚げをして,信販会社は車を処分することができることになっています。

車の処分をした後は,債務額から処分価格を差し引いた金額が残債務額となります。

これを防止するためには,任意整理では,自動車ローンについては債務整理の対象としないという方法をとることがでますが,個人再生や破産では特定の債権者を除外することができないので,そういう方法をとることができません。

また,個人再生や破産の申立そのものが期限の利益喪失事由(一括支払い)になっていますので,それまで延滞なく支払っていたとしても車の引き揚げは防げないということになるのです。

まず,自動車の残ローンについてのみ,ボーナス等のまとまったお金を準備して,再生,破産申立前にした場合にはどのようになるでしょうか。

1) 破産申立をすれば,自動車は資産に計上されますから,最終的には車を処分して配当に回すか,車の時価相当額を財団に組み入れることが求められます。

これでは,破産者としては苦しくなるのは当然でしょう。

但し,車の時価が20万円以下であれば,財団を構成しないので,こうした必要はないとされることもあります。

しかし,その程度の時価しかないのに,特定の債権者に対してのみ多額の残ローン債務を支払ったということになれば,偏頗弁済として免責障害事由になるので,お勧めできる方法とは言えません。

デリケートなことなので,依頼する弁護士とよく相談されるといいでしょう。

2) 債務整理という事態に至れば,車はあきらめるのが基本ですが,それでも仕事上車を残しておきたいというような場合には,車を第三者に買い取ってもらい,後は使用者の立場で利用することが考えられます。

買取をする場合に注意が必要なのは,(時価)−(残ローン債務)=(実質時価)以上での買取をしてもらうことです。それゆえ親族などの第三者には,信販会社に対して残ローン債務を支払ってもらい,実質時価部分を債務者に支払ってもらうことになります。

さらに,この代金受取額については,後の破産手続で費消目的が明らかになるようにすることです。この点は,依頼する弁護士とよく相談された方がいいでしょう。

ただ,往々にして残ローン債務が時価を上回っていることが多いので,そうした場合には果たして自動車を残す,という選択自体が正しいかどうかも検討する必要があります。

つまり,破産宣告後の自由財産(破産者が自由に使用してよい収入等)で,低廉な中古車を購入するという方が,経済的な負担が軽いということも多いからです。

3) こうした場合には,連帯保証人がついていることも少なくありません。

このような場合には,信販会社等に対して連帯保証人が同様の支払いを継続するとか,他に連帯債務者をつけて従前どおり分割金の支払いを継続することにより、信販会社もあえて車の引き揚げを要求してこない,というケースもあります。ただし、債務整理の開始→期限の利益を喪失→債権者としては担保に取った部分を換価して、残額を保証人に一括請求する、という流れがあくまでも基本です。

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