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競売物件買い受けを検討されるみなさんへ
(参考文献:横浜地方裁判所横須賀支部不動産競売部)
裁判所の競売物件とは
債務の弁済を受けられない債権者の申し立てにより、裁判所は担保権の設定された不動産、或いは債務者の所有する不動産に対する競売(強制競売)手続きを開始し、これを差し押さえます。
そして、執行官の現況調査及び不動産鑑定士の資格を持った評価人の鑑定評価などの売却準備を経て、期間入札や特別売却などの売却を実施します。買い受けがなされ、代金が納付されると、所有権移転などの登記をし、売却金を債務者に配当します。このような競売物件には一般の取引にはない数々の特徴〜リスクあるいはデメリット〜があります。
例えば、
ア)時間的制約のある中での一面的な調査により売却を行うために、情報が限られ、また調査後に状況が変化している場合もある。
イ)あらかじめ物件の中に立ち入って内部を確認することは出来ない。
ウ)物件の引き渡しを受けるための交渉等は買い受け人自身が行わなくてはならない。
エ)買い受け人が引き継ぐべき権利関係(賃借権等)や金銭債務(敷金返済、滞納管理費等)が存在する場合がある。
その他にも、裁判所は債権者の申し立てがあれば売却しなければならないため一般の市場では決して売りに出されないような欠陥を有する不動産が売却されていたり、所有者の不況力により調査結果として示されなかった事情が後からはんめいしたり、妨害を受けたりすることもあります。
それらに対する対処も基本的には自己責任となりますので、買い受け申し出にあたっては、裁判所の資料を精査し理解をしたうえで、また自らの調査・確認を踏まえ、慎重を期し、場合によっては弁護士等に相談するなどしてください。
当いちご綜合法律事務所でも相談をお受けします。
tel : 03-3589-4905 E-mail : info@ichigo-law.com
売却物件情報の提供について
例えば、横浜地方裁判所では、年間10回の売却(期間入札及び特別売却)を行っています。そこで売却される物件の情報については以下の方法で情報を公開しています。
売却物件情報はリクルート社発行の週間住宅情報[首都圏版]、読売新聞夕刊[首都圏版]、アットホーム・インターネット(http://www.athome.co.jp/)に掲載されています。
期間入札開始日のおよそ3週間前から、特別売却物件については開札期日の行われた日の午後から、売却済みまで、裁判所の物件明細書閲覧室に物件明細書ファイルが備置されます。入札、買い受け申し出に当たっては、必ず閲覧しましょう。
物件明細書ファイルの概要
物件明細書ファイルには、
a)売却日程、物件の表示、最低売却価格等を表示した公告、b)物件明細書、c)現況調査報告書、d)評価書、e)その他の資料、が綴られています。
1)物件明細書
裁判所が、現況報告書や評価書を検討して、不動産の表示、買い受け人が引き継ぐべき法律関係(賃貸借など)、法定地上権の概要及び買い受け申し出にあたって注意すべき事項を記載したものです。
売却後の登記抹消や引き渡し命令発令についての判断資料ともなりますが、そこに示された判断は当事者間の法律関係を最終的に確定するものではありません。その時点における執行裁判所の見通しといった程度のものです。
以下、簡単にその記載内容、語句について説明します。
「2.不動産にかかる権利の取得及び仮処分の執行で売却により効力を失わないもの」欄
競売による売却によっても効力を失わない権利や仮処分が記載される所で、この欄に記載された賃借権等の権利義務は買い受け人が引き継ぎます。
a)「賃借権」
その物件につき、所有者と第三者との間で、担保権設定などの前にすでに賃貸借契約が締結されていたもので、買い受け人は引き続きその第三者に対して賃貸しなければならないものを言います。この場合敷金などの返還義務も買い受け人が引き継ぎます。
b)「賃貸借(短期)」
担保権設定後の、土地については5年以下、建物について3年以下の一定期間に限って民法395条によって保護される賃借権です。
買い受け人の所有権取得の後、期限欄の期間が満了した後は、更新を買い請け人にに主張できないので、別途訴訟により明け渡しを求めることができます。
また、買い受け人の所有権取得前に期間が満了した場合は、代金納付し引き渡し命令をすれば発令されます。期限欄に「定めなし」と記載されているものは、買い受け人が解約の申し入れをすることにより、一定期間経過ごに賃貸借契約を終了させることができます。引き渡し命令は発令されません。
「3. 売却により設定されたものとみなされる地上権の概要」欄
建物だけ、あるいは土地だけが売却される場合に、法律によって建物のために地上権(敷地利用権)が設定されたと見なされる場合に記載されます。
c)「家屋番号〇〇番の建物のために法定地上権成立」と記載されている建物を買い受けた場合、買い受け人はその建 物所有者に対して土地の使用を認めなければなりません。
また、「地番〇〇の土地につき法定地上権成立」記載されている建物を買い受けた場合は、その敷地である土地を使用することができます。地代その他の条件は、当事者間の合意によるのが原則ですが、これが整わない場合は当事者の請求により裁判所が定めることになります。
d)「借地権付建物」
買い受け人が所有権を取得すると同時に借地人となり、土地所有者に対し地代を支払わなければなりません。
また、買い受け人は土地所有者から土地賃借権譲渡の承諾を得る必要があります。
その承諾が得られないときは、借地借家法20条により、代金納付後2ヶ月以内に、承諾に変わる裁判所の許可を求めることができます。
※建物のみが売却物件である場合は、事前に借地権の存否や法定地上権の成否を良く確かめ入札ください。これらの権利がない場合は、土地所有者から建物収去土地明け渡しを求められることがあります。
4. 備考」欄には、買い受け申し出をするに際して注意すべき事項が記載されています。
e)「市街化調整区域」
都市計画方により市街化が抑制される地域で、原則として建物の建築(再築)ができません。既存住宅などにより建築などできる場合もありますが、詳しくは物件所在地の市役所(町の場合は県の土木事務所)にお尋ねください。
f)「接面する道路の幅員は〇メートル」「道路に接面する距離は〇メートル」
都市計画区域内では、建物の敷地として利用するためには接面する道路の幅員は4メートル以上必要であり、それに満たない場合は道路の中心線から2メートル後退した線が道路との境界になります。(建築基準法42条2項)。セットバックの必要があることを示しています。
そしてその道路に敷地が2メートル以上接していなければ建物の建築ができません(同法43条1項)が、その制限を満たしていないことを示しています。
g)「管理費など滞納あり」
マンションの維持管理のために管理組合が規約に基づいて徴収している管理費・修繕積み立てなどに滞納があることを示しています。
買い受け人は、その滞納全部について管理組合に対する支払い義務を負います(建物の区分所有等に関する法律8条)。執行官、評価人の調査以降の分、調査で判明しなかった分でも同様です。
h)「敷地利用権は使用借権」「敷地利用は無権原」
いずれも競売物件建物の敷地である土地の所有者に対して、土地の使用を主張できないことを示します。敷地利用について何らかの形で承諾を得る必要があり、これが得られない場合には建物収去土地明け渡しを求められることがあります。
i)「〇〇の賃借権は、・・・なので買い受け人に対抗できない。」
j)「〇〇の賃借権は、正常のものとは認められない。」「〇〇の賃借権は債権回収を目的としたものと認められる。」
前者は買い受け人が引き継がなければならない賃貸借ではない、後者は短期賃借権として保護に値せず賃借権が否定されたことを示しており、いずれも敷金などの返還義務を引き継ぎません。
2.現況調査報告書
差し押さえ時点での物件の形状、占有状況等について、執行官が調査し作成した報告書です。物件明細書作成の資料となり、占有者に対する引き渡し命令発令の有無の判断資料を提供します。
3.評価書
評価人(裁判所が選任した不動産鑑定士)によって作成された、物件の評価額、その算出課程、評価の前提として調査した結果(物件の位置、付近の状況、物件の状況・概要、公法上の規制、物権の案内図、公図、地積測量図、建物図面、間取り図など)を記載、添付した文書です。
裁判所はこれに基づいて最低売却価額を決定します。上申書や評価補充書で訂正や変更がなされている場合もあるので、ご注意ください。
売却手続きについて
1.期間入札
入札期間内に、自己が買い受けるべき価額(広告に記載された最低売却価額以上の金額)などを記載した入札書を執行官に提出し、最高額を記載した入札者に買い受け申し出人としての資格を与える手続きです。
入札を希望される方は、執行官室で入札書の交付を受けて、2割の入札保証金を振り込んだ上、入札期間内に入札手続きをします。
入札書の記載・提出・補償金の提供方法/添付書類等具体的な手続きについては、執行官室へお尋ねください。入札後の変更、撤回、保証金の返還はできません。
また、開札期日が開かれるまでは事件の取り下げ等により期間入札が取りやめになる場合もあります。
2.開札期日
売却場(1階道交室または4階大会議室)で、入札箱から封筒を取り出し、開披して最高額を記載した入札書を読み上げ、最高価買い受け申し出人を決めます。
入札したからといって必ずしも開札期日に出頭しなくとも入札の効力などに影響はありません。ただし、次順位買い受け申し出、同額の場合は抽選はできません。
最高価買い受け申し出人あるいは次順位買い受け申し出人とならなかった方の入札保証金は、概ね2日後にあらかじめ指定した金融機関の口座に振り込み返還します。
3.特別売却
競争入札をしたが入札がなかった場合に行います。
最低売却価額の2割の額の買い受け申し出保証金を提供したうえ最低売却価額以上の金額で買い受け申し出をした方に先着順で執行官が受け付け(毎週木曜日のみ)、売却します。
申し出の方法については執行官室にお尋ねください。
4.売却決定
執行裁判所は、最高価買い受け申し出人及び特別売却における買い受け申し出人に対し売却を許可するか否かの決定を、期日を開いて言い渡します。
決定について特に法律上の主張をするという方以外は出頭する必要はありません。
1週間の不服申立(高等裁判所に対して審査を求める執行抗告という手続)期間を経過すると、売却許可決定は確定し、正式に買受人となります。
5.農地の買受け執行裁判所が、物件の表示に☆印を付し、農地として売却しているものは入札等にあたって農業委員会の交付する買い受け適格証明書を添付してください。
交付を受けるためには農業従事者であるなど資格制限があります。
市街化区域の農地については一般の方も交付を受けることが出来ます。
詳細については、市、町の農業委員会にお問い合わせください。
買受申出人となった後、売却調書謄本を添付し農業委員会に許可申請(あるいは届出)をし、許可(届出受理)の証明書を売却決定までに裁判所に提出してください。
代金納付の手続について
売却許可決定が確定すると、裁判所は代金納付期限を定め、買受人に代金納付期限通知書と案内書等を特別送達郵便(書留郵便の一種)で送付します。
売却決定期日から10日前後で届くのが目安です。
届かない場合には執行抗告が提出されている(その場合には2〜3か月手続が遅れる場合があります。)可能性がありますので電話でお問い合わせください。
代金納付期限は1か月から1か月半ほど先に指定されます。
必ずその日までに残代金を所定の用紙で裁判所口座に振り込み、必要書類を取り揃え、裁判所に来て残代金の納付手続をします。
期限の延伸は原則としてありません。
期限を過きると、保証金は没収され、買受人の資格も無くなり、次回以降買受申出が制限されます。
期限前に納付手続をされたい方は事前に担当者と相談しましょう。
裁判所の所有権移転登記嘱託と同時に金融機関等の抵当権を設定登記をされたい方は、別に備え置いた案内書面を読む他、弁護士・司法書士にご相談を。登記完了後、登記済権利証が特別送達郵便で送付されます。大切に保管ください。
物件の引き渡しについて
物件引き渡しについては買い受け人において行うことになります。
交渉で任意の引渡を拒む場合は、引渡命令を申立て、発令後命令が確定したら執行文の付与を書記官から受け、執行官に引渡の強制執行を申し立てましょう。
費用は、買受人の負担となります。
引渡命令が発令されない場合は民事訴訟などによります。
引渡命令は、簡易迅速な物件の引渡を受けられるよう民事執行法に定められた裁判です。
債務者、所有者、物件明細書2の欄に記載されていない者(=賃借権等の権利を買受人に対抗できない占有者)、物件明細書に賃借権(短期)と記載されているが代金納付時既に期間が経過している者を相手方として発令されます。
なお、平成8年(ケ)第163号、平成8年(ヌ)第35号以前の事件は、改正前の民事執行法が適用される結果、発令要件が異なるのでご注意ください。
なお、最高裁判所にも、不動産競売のページがありますので見て下さい。
http://courtdomino.courts.go.jp/keibai.nsf/$About
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