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個人再生徹底活用マニュアル

千川健一・坂本隆志
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相続税の基礎知識

<6> 相続税の申告と納付

(1) 原則
相続税の課税価格の合計額が,遺産に係る基礎控除額(5000万円+法定相続人の数×1000万円)を超える場合において,配偶者の税額軽減の規定の適用がないものとして相続税額の計算を行ったときに,納付すべき相続税額がある相続人または受遺者は,相続税の申告書をその被相続人の死亡時における住所地の所轄税務署長に提出しなければなりません(相続税法27条1項)。
相続税の申告書の提出期限は,原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

相続税の申告書を提出した者は,原則としてその申告書の提出期限までに,その申告書に記載した相続税額を,国に金銭で一括納付しなければなりません(相続税法33条)。
なお,同一の被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者は,その相続または遺贈によって取得した財産に係る相続税及び当該被相続人に係る相続税について,その相続または遺贈によって受けた利益の額を限度として,連帯納付の義務が課せられています(相続税法34条1項,2項)。

また,相続税の課税価格計算の基礎になった財産について,贈与,遺贈または寄附行為による移転があった場合には,それらにより財産を取得した者または法人は,それらにより受けた利益の価額を限度に,一定の範囲で相続税の連帯納付の責に任ずることになっています。

相続税の申告期限内に申告書を提出しなかった場合でも,税務署長による税額の決定があるまでは,申告書を提出して(これを「期限後申告書」といいます。)これにしたがって相続税を納税することができ,また期限内に申告書を提出した場合でも,税務署長による税額の決定があるまでは,従前に提出した申告書の内容を修正する申告書(これを「修正申告書」といいます。)を提出しこれにしたがって相続税を納税することができますが,以下の(3)から(5)までの特例に該当しない場合には,通常の税額に加え延滞税などの附帯税を課される場合があります。

相続税の申告書が提出されない場合には,税務署長が調査を行い職権で税額を決定することがあります。決定をする権限は,原則として申告期限から5年を経過すると時効によって消滅しますが,納税義務者に悪質な脱税行為等があったときには,その時効は7年となります。
また,申告書が提出されていても,その内容に誤りがある場合には,税務署長は更正処分をすることができます。更正処分には増額更正(税額を増額する更正)と減額更正(税額を減額する更正)とがありますが,増額更正の期限は原則として申告期限から3年,減額更正の期限は申告期限から5年とされています。ただし,納税義務者に悪質な脱税行為等があったときには,その時効は7年となります。

そのほか,相続税の申告書を提出した者は,その申告書に記載した税額の計算等に誤りがあり過大となっている場合には,その申告書の申告期限から1年以内に限り,減額更正の請求をすることができます(国税通則法23条1項)。

(2) 義務違反者に対する附帯税等

1) 延滞税
相続税を期限内に納付しなかった場合には,当該納付しなかった相続税額に以下の割合を乗じて計算した延滞税が課税されます(国税通則法60条,租税特別措置法94条1項)。
期間 延滞税の税率
納期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間 次のいずれか低い割合
A 年7.3%
B 前年11月末における公定歩合+4%
納期限の翌日から2ヶ月を超えた期間 年14.6%
2)過少申告加算税
相続税の申告後,修正申告書の提出や増額更正があった場合には,本来納付すべき相続税額に加え,原則としてその額の10%(増加した税額が50万円と期限内申告税額のいずれか多い金額を超える場合の超過部分については15%)に相当する額の過少申告加算税が課税されることがあります(国税通則法65条)。ただし,実務上は,税務調査を受けたことにより更正されることを予知して修正申告書を提出したものでないときは,過少申告加算税は課されないことになっています。
3)無申告加算税
相続税の申告書を期限内に提出しなかった場合には,それにつき正当な理由があると認められる場合を除き,本来納付すべき相続税額に加え,その額の15%に相当する額の無申告加算税が課されることがあります(国税通則法66条)。なお,税務調査を受けたことにより更正または決定がされることを予知して修正申告書を提出したものでないときは,無申告加算税の額は本来納付すべき相続税額の5%となります。
4)重加算税
納税者が,課税標準や税額などの基礎となる事実を仮装し,または隠蔽していた場合に,過少申告加算税または無申告加算税に代えて課税されます。重加算税の税率は,過少申告加算税に代えて課税される場合は35%,無申告加算税に代えて課税される場合は40%です(国税通則法68条)。
5)刑事罰
納税者が,偽りまたは不正の行為により相続税または贈与税を免れたときは,5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられ,またはこれを併科されることがあります(相続税法68条)。なお,不正行為によって免れた相続税または贈与税の額が500万円を超えるときは,罰金額は,500万円を超えその免れた税額以下となることがあります。
そのほか,正当な理由なく相続税の期限内申告書を提出しなかった者,税務調査を妨害または忌避した者などに対する罰則も用意されています(相続税法69条,70条)。

(3) 期限後申告の特例
申告書の提出期限後においても,次の事由が生じたために新たに相続税の申告書の提出義務者となった者は,決定があるまでは,相続税の期限後申告書を提出することができるものとされています(相続税法30条)。なお,この場合には延滞税などは課税されません。

1)未分割財産について,法定相続分または包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されている場合において,その後その財産の分割が行われ,共同相続人または包括受遺者の課税価格が,法定相続分または包括遺贈の割合に従って計算した課税価格と異なることとなった場合
2)認知,相続人の廃除ならびにその取消しに関する裁判の確定,相続の回復または相続の放棄の取消しその他の事由により,相続人に異動が生じた場合
3)遺留分による減殺の請求があった場合
4)遺贈に係る遺言書が発見され,または遺贈の放棄があった場合

(4) 修正申告書の特例
申告,更正または決定により,既に確定した相続税額が,上記Bの1)から4)までに掲げる事由が発生したことにより,不足額を生ずることとなった場合には,修正申告書を提出することができます(相続税法31条1項)。
また,相続税の申告書を提出した者が,特別縁故者として相続財産法人から財産の分与を受け,または被相続人の死亡後3年以内に退職金の支給が確定したことにより,既に確定している相続税額に不足を生じた場合には,その分与を受けた日の翌日から10ヶ月以内に修正申告書を提出しなければなりません。

(5) 更正の請求の特例
申告,更正または決定があった後,次に掲げる事由が生じたことにより,その申告,更正または決定に係る相続税の課税価格または税額が過大になった場合には,その事由が生じたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限り,その課税価格及び税額の更正の請求をすることができます(相続税法32条)。

1)未分割財産について,法定相続分または包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されている場合において,その後その財産の分割が行われ,共同相続人または包括受遺者の課税価格が,法定相続分または包括遺贈の割合に従って計算した課税価格と異なることとなった場合
2)認知,相続人の廃除ならびにその取消しに関する裁判の確定,相続の回復または相続の放棄の取消しその他の事由により,相続人に異動が生じた場合
3)遺留分による減殺の請求があった場合
4)遺贈に係る遺言書が発見され,または遺贈の放棄があった場合
5)特別縁故者として,相続財産法人から財産の分与を受けた場合
6)相続税の申告期限から原則として3年以内に未分割の財産が分割されたことにより,配偶者に対する相続税額の軽減を適用できることとなった場合において,その適用の結果従前の相続税額と異なることとなった場合

(6) 延納及び物納
相続税は,金銭で一括納付することが原則ですが,相続財産の内容によっては金銭一括納付が困難である場合も予想されるため,相続税法では,一定の要件のもとに相続税の延納及び物納を認めています。

1) 延納 次のすべての要件を満たさなければなりません。

A 納付すべき相続税額が10万円を超えること
B 納期限までに,または納付すべき日に金銭で納付することが困難であること
C 納期限までに,または納付すべき日までに延納申請書を提出すること
D 担保を提供すること(ただし,延納税額が50万円未満で,かつ延納期間が3年以内の場合には,担保は不要)
E 税務署長から延納を許可されること

なお,相続税を延納する場合には,その相続財産の種類や延納期間に応じて,一定の利子税(年3.0%から6.0%。ただし現在は,租税特別措置法の規定により,所定の割合に前年11月末における公定歩合+4%(特例基準割合)÷7.3%の割合を乗じた割合に軽減される措置が採られています)が課税されます。

2) 物納 次のすべての要件を満たさなければなりません。

A 相続税を延納によっても金銭で納付することが困難な事由があること
B 申請により税務署長の許可を受けること
C 金銭で納付することが困難である金額の範囲内であること
D 物納できる財産であること

ここでいう「物納できる財産」というのは,わかりやすく言えば,売却による換価が容易なものである財産という意味であり,質権,抵当権その他の担保権の目的となっている財産,法律や定款の規定により譲渡制限のある財産,所有権等について係争中の財産などは,物納することができません。なお,物納財産は,原則としてその時価ではなく,相続税評価額で収納されることになります。

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