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千川健一・坂本隆志
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贈与税の基礎知識

<6> 相続時精算課税制度

(1) 制度趣旨
相続時精算課税制度は,平成15年4月1日施行の改正で設けられた,一定の相続人に対する贈与について贈与税の特例を認める制度であり,相続発生時にそれまで贈与された財産を相続により取得したものと税法上みなして課税関係を精算することにより,財産を相続させた場合と贈与した場合の税負担を基本的に同一にするというものです。

具体的には,贈与の目的を問わない非課税限度額2500万円の原則的取り扱いと,住宅取得目的の贈与に限り適用される非課税限度額3500万円の特例の2種類があり,後者は平成17年度までの時限措置です。

この制度は,あまり財産を消費しない傾向にある高齢者が高額の財産を蓄えたままでいると,消費が拡大せずなかなか景気が良くならないというので,世代間の財産移転を促進する目的で設けられましたが,制度の悪用による課税のがれを防ぐため,適用には様々な制限が設けられているので,利用の際には注意が必要です。

(2) 原則的取り扱い
贈与により財産を取得した者が,次のAからDまでのすべての要件を満たす場合においては,当該贈与に対する課税について,相続時精算課税制度を選択することができます(相続税法21条の9以下)。

A 贈与を受けた者が,贈与をした者の(民法上の)推定相続人であり,かつ,贈与をした者の直系卑属(子,代襲相続人である孫など)であること
B 贈与をした者が,その贈与をした日において65歳以上であること
C 贈与を受けた者が,その贈与を受けた日の属する年の1月1日において20歳以上であること
D 当該贈与を受けた年の翌年の3月15日までに,所轄の税務署長に対し,相続時精算課税制度を選択する旨の届出書を提出すること

相続時精算課税制度を選択した場合,贈与税額は,贈与財産の価額から非課税限度枠(2500万円)を控除した額に,一律20%の税率をかけた金額となります。
この非課税限度額は,複数回に分けて利用可能です(基礎控除と異なり,毎年2500万円を控除できるわけではないので,注意してください)。

相続時精算課税制度を選択した場合,その贈与者について相続が発生すると,相続税の課税価格に当該制度を選択して贈与を受けた金額が加算される一方,これによって計算された当該贈与を受けた者が支払うべき相続税額からは,その者が既に支払った贈与税相当額が控除されます(控除しきれない金額については,還付が受けられます)。

なお,一旦相続時精算課税制度を選択すると,その後同じ贈与者から再び贈与を受けた場合でも,その贈与について贈与税の基礎控除(年110万円)の適用を受けることはできなくなるほか,相続時精算課税制度の選択の撤回(届出書の撤回)をすることもできなくなりますので,注意してください。

(3)住宅取得資金贈与の特例
住宅取得資金の贈与について相続時精算課税制度の適用を受ける場合で,次の1)から8)までのすべての要件を満たす場合には,特例措置が認められています(租税特別措置法70条の3)。

1) 平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に,住宅の取得若しくは新築,または一定の増改築の対価に充てるための金銭の贈与を受けたこと
2) 贈与を受けた者が,無制限納税義務者に該当する個人であること
3) 贈与を受けた者が,贈与をした者の(民法上の)推定相続人であり,かつ,贈与をした者の直系卑属(子,代襲相続人である孫など)であること
4) 贈与を受けた者が,その贈与を受けた日の属する年の1月1日において20歳以上であること
5) 贈与を受けた者が,次のAまたはBに該当すること

A 住宅取得資金を贈与により取得した日前5年以内にその者またはその配偶者の所有にかかる住宅用家屋に居住したことがない者であること
B 住宅取得資金を贈与により取得した日前5年以内に居住していたその者またはその者の配偶者の所有にかかる住宅用の家屋及び土地を,その取得の日に属する年の翌年3月15日までに譲渡していること

6) 住宅の取得または新築の場合は,その適用を受ける家屋が次のAからDまでのすべてを満たすものであること

A 相続税法の施行地内(日本国内)にあること
B 床面積が50u以上であること
C その家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されていること
D その家屋が中古住宅である場合は,その取得日以前20年(耐火建築物については25年)以内に建築されたものであること

7) 住宅の増改築の場合は,工事費用が100万円以上であり,かつ増改築後の床面積が50u以上であること
8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに,住宅を新築または取得し(増改築の場合はこれを完了させ),これに居住するか居住する見込みであること

以上の要件をすべて満たす場合には,贈与者が65歳未満であっても相続時精算課税制度を利用することができ,贈与税の非課税限度額も3500万円に拡大されます。

贈与税については,以上のほかに農地等を贈与した場合の納税猶予の特例などもありますが,ほとんど問題にならないのでここでは省略します。

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